疫学Ⅰ

【保健師国家試験問題】

5 職場の特定健康診査の結果、血圧が高い者の割合が多かった。 血圧が高い者の食事摂取内容を確認すると、味の濃い食事や麺類を好んで食べていることが分かったため、 事業所の保健師は、血圧が高かった者を対象に月1回の6か月コースで減塩教室を実施することにした。
減塩教室実施後のアウトカム評価で最も適切なのはどれか。
1.血圧値
2.1日の食塩摂取量
3.減塩教室の参加率
4.産業医との面談回数

1.血圧値

1.〇 正しい。血圧値は、減塩教室実施後のアウトカム評価で最も適切である。なぜなら、減塩教室を実施する目的は参加者の血圧値低下であるため。
2~3.× 1日の食塩摂取量/減塩教室の参加率は、アウトプット評価である。なぜなら、これらは事業実施過程と参加状況などから直接生じた結果(数や量)を評価するものであるため。
4.× 産業医との面談回数を増やすことや減らすことが目的でないため不適切である。

7 A 市の新生児訪問のデータを表に示す。

このデータの統計分析に適切なのはどれか。
1.F 検定
2.t 検定
3.U 検定
4.χ2(カイ二乗)検定
4.χ2

1.× F 検定は、2つのデータ群のばらつきが等しいかどうか(等分散)を検定する。
2.× t 検定は、2群間の平均値の差を検定する。
3.× U 検定は、2群をひとまとめにして順位をつけ、群ごとの順位の和を用いて比較する検定である。
4.〇 正しい。χ2(カイ二乗)検定は、2つの変数カテゴリー同士の観察された頻度に、理論値との差(割合の差)があるかどうかを検定する。

16 患者調査で正しいのはどれか。
1.5年に1回実施される。
2.推計患者数には調査日に受療した患者数が含まれる。
3.調査日に入院している患者の平均在院日数が把握される。
4.総患者数には医療を受けたことのない有病者数も含まれる。

2.推計患者数には調査日に受療した患者数が含まれる。

1.× 5年ではなく、3年に1回実施される。患者調査は、全国の医療施設を利用する患者の傷病などの状況を把握するため実施されている。
2.〇 正しい。推計患者数には調査日に受療した患者数が含まれる。推託患者数は、調査日当日に、「病院・一般診療所・歯科診療所で受療した患者の推計数」であり、実際に受療した患者数も含まれる。
3.× 調査日に入院している患者の平均在院日数ではなく、「退院した患者の在院日数の平均(平均在院日数)」が把握される。
4.× 総患者数には医療を受けたことのない有病者数は含まれない。なぜなら、総患者数は、調査日現在において、継続的に医療を受けている者の数を算出したものであるため。入院患者や初診外来患者数、再来外来患者数が含まれる。

17 国際疾病分類ICDについて正しいのはどれか。
1.第回改訂ICD-9が最新である。
2.各種疾病の治療指針が示されている。
3.世界保健機関WHOが改訂を行っている。
4.国際生活機能分類ICFの上位概念である。

3.世界保健機関(WHO)が改訂を行っている。

1.× 第9回改訂(ICD-9)ではなく、第10回改訂lCD-10(2013年版)が最新である。ただし、最新版は2019年に改訂された第11回改訂版(lCD-11)で、日本でも適用に向け準備中である。
2.× 各種疾病の治療指針ではなく、「国際疾病分類は疾病の分類」が示されている。
3.〇 正しい。世界保健機関(WHO)が改訂を行っている国際統計分類のひとつである。国際疾病分類は、世界保健機関(WHO)が国際的に比較できるよう疾病分類の基準を定めている。
4.× 国際生活機能分類(ICF)と全くの別である。国際生活機能分類(ICF)は、健康状態を「生活機能と障害」と「背景因子」から評価する分類で、障害を有する人の支援を総合的に評価検討する分類として使用されている。

22 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律感染症法について正しいのはどれか。
1.入院勧告によって感染症指定医療機関で受ける入院治療の医療費は公費負担となる。
2.感染症まん延防止のために予防接種を勧奨する疾患について規定されている。
3.無症状病原体保有者についての届出は定められていない。
4.A 型肝炎は三類感染症である。

1.入院勧告によって感染症指定医療機関で受ける入院治療の医療費は公費負担となる。

1.〇 正しい。入院勧告によって感染症指定医療機関で受ける入院治療の医療費は公費負担となる。公費負担医療とは、医療費の全額もしくは大部分を公的管理された基金が負担する医療制度のことをいう。都道府県知事は、1類・2類感染症、新型インフルエンザ等感染症の患者に感染症指定医療機関に入院を勧告することができる。
2.× 感染症まん延防止のために予防接種を勧奨する疾患について規定されているのは、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」ではなく『予防接種法』である。A類疾病とB類疾病が定められている。
3.× 無症状病原体保有者についての届出も定められている。無症状病原体保有者は、就業制限や積極的調査の対象ともなる。
4.× A型肝炎は、三類感染症ではなく四類感染症である

24 成人男性の部位別にみた悪性新生物の年齢調整死亡率の推移のグラフを示す。

A の一次予防として正しいのはどれか。
1.肥満予防
2.減塩の推奨
3.野菜の摂取
4.受動喫煙防止
5.節度ある飲酒

4.受動喫煙防止

1.× 肥満予防で効果的なものは、大腸癌・膵癌・食道癌などといわれている。
2.× 減塩の推奨で効果的なものは、胃癌といわれている。
3.× 野菜の摂取とがんの罹患や死亡との関連は報告されていない。
4.〇 正しい。喫煙や受動喫煙防止は、肺癌に効果的である。 肺癌は、男性の悪性新生物で年齢調整死亡率が最も高い「令和元(2019)年人口動態統計(厚生労働省)」。 したがって、受動喫煙の防止は、肺癌の一次予防となる。
5.× 節度ある飲酒に効果的なものは、大腸癌・喉頭癌・食道癌・乳癌などといわれている。

26 人から人への直接の伝播がない感染症はどれか。
1.痘そう
2.ペスト
3.腸チフス
4.デング熱
5.腸管出血性大腸菌感染症

4.デング熱

1.〇 痘そうの感染経路は、唾液や喀痰の飛沫による飛沫感染である。つまり、人から人へ直接伝播する。
2.〇 ペストの感染経路は、ネズミなどのげっ歯類からノミを介する媒介動物感染、飛沫感染である。つまり、人から人へ直接伝播する。
3.〇 腸チフスの感染経路は、患者の糞便で汚染された食物や水を摂取することによる経口感染である。つまり、人から人へ直接伝播する。
4.× デング熱は、人から人への直接の伝播がない感染症である。蚊による媒介動物感染のみである。
5.〇 腸管出血性大腸菌感染症の感染経路は、水系感染や食物感染などの経口感染である。経口摂取物が患者の微量の糞便で汚染されている場合でも感染が成立し得る。つまり、人から人へ直接伝播する。

29 A 市のある一時点における C 型肝炎を有している人の割合を示す指標はどれか。
1.罹患率
2.被患率
3.有病率
4.寄与危険
5.相対頻度

3.有病率

1.× 罹患率とは、一定の観察期間において、観察集団のなかで新たに疾病を有した人の率である。
2.× 被患率とは、ある疾病・異常のある者が集団全体に占める割合を示すものである。国・地方自治体の学校保健統計で使用されることが多い。その場合、分母には在学者数がおかれる。
3.〇 正しい。有病率とは、ある一時点における観察集団での疾病保有者の割合を意味する。
4.× 寄与危険(リスク差)とは、曝露群と非曝露群での一定期間においての発生率(罹患率)の差をみる指標である。「曝露因子があるとどれだけ危険度が増すか」を示す。
5.× 相対頻度とは、いくつかのカテゴリーにおけるそれぞれの度数(データ数)が全体に占める割合の大きさを示すものである。

30 平成30年(2018年)の人口動態統計月報年計における性・年齢階級別にみた主な死因の構成割合。
自殺はどれか。

1.A
2.B
3.C
4.D
5.E

5.E

1.× Aは老衰である。高齢になるにつれて男女とも死亡割合が増大し、100歳以上では死亡割合が最も大きい疾患である。
2.× Bは脳血管疾患である。男女とも全年齢階級で死亡が観察されるが、0~4歳の年齢階級で死亡がごくわずかである。
3.× Cは肺炎である。男女とも全年齢階級で死亡が観察され、高齢者で死亡割合が増加する特徴を持つ。
4.× Dは不慮の事故である。男女とも全年齢階級で死亡が観察されるが、5~9歳の年齢階級おいて、悪性新生物と並んで多くの死亡が観察される特徴を持つ。
5.〇 正しい。Eは自殺である男女とも10歳以上の年齢階級で死亡が観察され、特に男性では15~44歳の年齢階級で、また女性では15~29歳の年齢階級で死亡が最も多くなる特徴を持つ。

40 人口 10 万人の A 市におけるある年度の死亡数は 1,000 人であった。
悪性新生物の罹患数は 300 人であり、その死亡数は 200 人であった。
死亡に占める悪性新生物の相対頻度を求めよ。
ただし、小数点以下の数値が得られた場合には、小数点以下第位を四捨五入すること。

20%

悪性新生物の死亡数 ÷ 全死亡数 × 100
= 200人 ÷ 1000人 × 100
=20(%)

次の文を読み 44〜46 の問いに答えよ。

人口70万人のA市。 8月のある日、深夜から早朝にかけ大規模災害が発生し、 市内で家屋の倒壊、道路の陥没・停電・断水等の被害があり、特にB地区で甚大な被害が出た。 B地区を管轄する保健センターの職員は全員A市に住んでいる。

44 発災当日の朝、B地区を管轄する保健センターに出勤できた保健師は16名中3名だった。
発災当日、出勤した保健師の行動で適切なのはどれか。
1.福祉避難所の開設
2.市災害対策本部の立ち上げ
3.管内医療機関の位置図の作成
4.医療機器を使用する難病患者の安否確認

4.医療機器を使用する難病患者の安否確認

1.× 福祉避難所の開設は優先度は低い。なぜなら、福祉避難所の開設する場合は、市町村からの要請があるため。福祉避難所とは、避難所生活において何らかの特別な配慮を必要とする要配慮者のための施設であり、状況に応じて必要時、開設される市町村が、福祉避難所の施設管理者に対して開設を要請するものである。
2.× 市災害対策本部の立ち上げは優先度は低い。なぜなら、災害対策本部の立ち上げは、市役所の危機管理部門の役割であるため。
3.× 管内医療機関の位置図の作成は優先度は低い。なぜなら、管内医療機関の位置図作成は、平常時に作成しておくものであるため。
4.〇 正しい。医療機器を使用する難病患者の安否確認は、発災当日、出勤した保健師の行動で適切である。災害当日は、被害状況の確認が優先される。

45 発災後2日、 B保健センターの保健師が避難所の一つである市民センターを初めて訪問した。 避難所の管理者より、避難所の建物に入らず市民センターの駐車場に車中泊をしている世帯が多数あり、 炊き出しやトイレ以外は終日車の中で過ごし、あまり外に出てこないようだとの声が聞かれた。 そのため、保健師は車中泊の避難者も巡回することにした。
巡回時の確認事項で最も優先度が高いのはどれか。
1.食事内容
2.水分摂取量
3.車内換気の頻度
4.他者との交流の頻度

2.水分摂取量

1.× 食事内容より優先度が高いものが選択肢の中にある。なぜなら、避難所では炊き出しが行われており食事に関してはある程度適切に対応されていると考えられるため。
2.〇 正しい。水分摂取量は、巡回時の確認事項で最も優先度が高い。夏季の車中泊では、エアコン使用による温度管理が適切に行われず、脱水の危険があるため。また、脱水に伴いエコノミークラス症候群の危険性も高まる。
3.× 車内換気の頻度より優先度が高いものが選択肢の中にある。冬季は感染症予防のために配慮が必要である。ただし、就寝時にエンジンやエアコンをつけたままにすると、一酸化炭素中毒となる危険性があるため注意喚起が必要となる。
4.× 他者との交流の頻度より優先度が高いものが選択肢の中にある。なぜなら、生命の危機には直接関係しないため。ただし、被災者のメンタルヘルスや情報交換において重要である。

46 発災後2か月、仮設住宅の入居が始まっている。B保健センターには、 県外の保健師による派遣チームが入り、協働で災害支援活動を行っている。 派遣チームの保健師は、B保健センターの職員から 「被災した住民の話を聞いていると自分も気持ちが落ち込む」「仮設住宅に入居できない住民の苦情を聞くのがつらい」 「住民のために活動したいが、自分は無力だと感じる」等の声を多く聞いた。
派遣チームの保健師が、B保健センターの職員への支援についてB保健センターの管理者に提案する内容で最も適切なのはどれか。
1.健康診断の実施
2.人事異動の提案
3.精神科の受診勧奨
4.職員同士で語り合う場の用意

4.職員同士で語り合う場の用意

1.× 健康診断の実施は優先度が低い。なぜなら、メンタル面でのストレス対応に特化したものではないため。
2.× 人事異動の提案は優先度が低い。なぜなら、人事異動は、環境を変えることで負担が増す場合もあるため。必ずしも良い方向へ進むとは限らない。
3.× 精神科の受診勧奨は優先度が低い。精神科の受診は、健康診断により保健師のメンタルヘルスをアセスメントしたうえで必要であれば提案する。
4.〇 正しい。職員同士で語り合う場の用意は、派遣チームの保健師が、B保健センターの職員への支援についてB保健センターの管理者に提案する内容で最も適切である。災害対応時のメンタルヘルス対策として、日々の活動後に語り合い、ねぎらいやがんばりを認め合うことは、ストレス発散に効果があるといわれている。

3 結核に対する特異的予防はどれか。
1.栄養改善
2.再発予防
3.BCG 接種
4.重症化予防

3.BCG 接種

1.× 栄養改善は、一次予防である。非特異的予防であり、健康増進・疾病予防に分類される。
2.× 再発予防は、三次予防である。疾病の悪化防止になる。
3.〇 正しい。BCG 接種(予防接種)は、一次予防である。結核に対する特異的予防である。
4.× 重症化予防は、三次予防である。疾病の悪化防止になる

8 A 地区の人口静態をアセスメントする方法で、適切なのはどれか。
1.統計資料の二次活用
2.社会調査
3.地区踏査
4.分析疫学

1.統計資料の二次活用

1.〇 正しい。統計資料の二次活用することは、A地区の人口静態をアセスメントする方法として適切である。A地区に住んでいる総人口と属性を把握する国勢調査などの統計資料を二次活用(原作品・原論文・原資料などを引用・転載・コピーするなどして利用すること。)する。
2.× 社会調査とは、社会や集団における事象を、データの収集・集計・分析のプロセスを経て明らかにするものである。調査目的に沿った調査項目が設定される必要がある。
3.× 地区踏査とは、地域へ出向き、地域の環境や人々の様子を観察することである。
4.× 分析疫学とは、記述疫学などで立てた仮説を検証する方法で、コホート研究や症例対象研究などがある。

19 同じ集団における同一のスクリーニング検査で、基準値を変えて敏感度を上げた場合に上昇するのはどれか。
1.特異度
2.偽陽性率
3.偽陰性率
4.陰性者数

2.偽陽性率

1.× 特異度は下がる。なぜなら、敏感度が上がると、検査の陰性者数が減るため。
2.〇 正しい。偽陽性率は上昇する。なぜなら、敏感度が上がると、疾病がある人を陽性と判定する割合も増えるが、同時に、疾病がない人を陽性と判定する割合も増えるため。同一集団に対するスクリーニング検査で敏感度が上がると、検査で陽性・陰性と判定される人数(割合)は変わるが、本当に疾病を有しているかどうか(疾病あり・なし)の事実は変わらない。
3.× 偽陰性率は下がる。なぜなら、敏感度が上がると、疾病がある人を陽性と判定する割合が増えるため。
4.× 陰性者数は減少する。なぜなら、敏感度が上がると、検査の陽性者数が増えるため。

35 計算するときに人年法を用いるのはどれか。2つ選べ。
1.死亡率
2.有病率
3.被患率
4.有訴率
5.罹患率比

1.死亡率
5.罹患率比

1.〇 正しい。死亡率は、計算するときに人年法を用いる。死亡率とは、一定の観察期間において、観察集団のなかで死亡した人の割合である。観察期間が人によって異なる場合、分母は人年法によって、一人ひとりの観察期間の総和を用いる。
2.× 有病率とは、ある一時点において、観察集団のなかで疾病を有している人の割合のことをいう。
3.× 被患率とは、ある一時点において、健康診断等を受けた人(受検者数)のうち、疾病や異常ありに該当した人(疾病・異常該当者数)の割合のことをいう。
4.× 有訴率とは、ある一時点において、観察集団のなかで病気やけが等で自覚症状のある人(有訴者)の割合のことをいう。
5.〇 正しい。罹患率比は、計算するときに人年法を用いる。罹患率比とは、2つの群の罹患率の比のことである。罹患率は、一定の観察期間において観察集団のなかで新たに疾病を有した人の率で、分母は人年法による観察人年を用いる。

次の文を読み 48〜50 の問いに答えよ。

 Aさん(81歳、女性)。認知症と診断され、症状緩和のための服薬調整を目的として、B病院認知症治療病棟に入院した。 入院前から軽い咳嗽はあったが、喘息の既往歴によるものとされていた。 入院後2週、39℃台の発熱があり、胸部エックス線写真で肺炎像を認めたので、誤嚥性肺炎の診断のもとに抗菌薬の投与を行った。 しかし、解熱しないため、C病院に転院し、喀痰塗抹菌検査陰性、結核菌PCR陽性となり、肺結核と診断されC病院の結核病棟で治療が開始された。 診断した医師から保健所に結核発生の届出があった。B病院認知症治療病棟では、4人部屋に入院しており、Aさんの近所に住む長女は2日に1回は面会に来ていた。 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)第17条に基づき早期発見のために長女に初回面接を行うことにした。

48 自宅での A さんの結核初期症状で長女への初回面接で確認すべき事項はどれか。
1.体温の変化
2.体重減少の有無
3.怠感の訴えの有無
4.咳嗽の状態変化の有無

4.咳嗽の状態変化の有無

1~3.× 体温の変化/体重減少の有無/倦怠感の訴えの有無は優先度が低い。なぜなら、まずは典型症状の把握が優先されるため。ただし、高齢の結核患者では、非典型症状(倦怠感、食欲不振、体重減少など)を主訴とする者が少なくないため、これらも把握しておくことも大切である。
4.〇 正しい。咳嗽の状態変化の有無は、自宅での結核初期症状で長女への初回面接で確認すべきである。 なぜなら、結核患者の症状として咳がある場合は、ない場合に比べて感染リスクが高いため。 結核初期症状として、呼吸器症状(特に咳)の出現・悪化時期の把握は最も重要である。

49 その後、喀痰塗抹菌検査は3回連続で陰性、胸部エックス線写真上も空洞はなかったが培養検査結果は陽性だった。
Aさんの感染性の評価に基づいて行う接触者健康診断の対象者で適切なのはどれか。
1.接触者全員
2.C 病院の結核病棟の患者
3.接触者で免疫力が低下している人
4.B 病院認知症治療病棟の全ての患者と職員

3.接触者で免疫力が低下している人

1~2.4.× 接触者全員/C病院の結核病棟の患者/B病院認知症治療病棟の全ての患者と職員は、Aさんの感染性の評価に基づいて行う接触者健康診断の対象者ではない。なぜなら、接触者のなかでもハイリスク接触者・濃厚接触者などの把握と検診が必要あり、結核と診断され、感染対策がなされた後の接触者は原則、接触者健診の対象とはならないため。
3.〇 正しい。接触者で免疫力が低下している人は、Aさんの感染性の評価に基づいて行う接触者健康診断の対象者で適切である。なぜなら、接触者で免疫力が低下している人は、結核の発病リスクが高いハイリスク接触者とされるため。

50 A さんは、低感染性の結核であると診断され、接触者健康診断を実施することになった。
最優先に接触者健康診断を行うことが望ましい接触者はどれか。
1.長女
2.B 病院で同室者であった入院患者
3.B 病院認知症治療病棟に配膳車を運ぶ栄養課職員
4.A さんの自宅へ週回生活援助に訪れていた訪問介護員

2.B 病院で同室者であった入院患者

1.× 長女は、最優先とはならない。なぜなら、長女は別居であり、発病ハイリスクの要因はないため。
2.〇 正しい。B病院で同室者であった入院患者は、最優先に接触者健康診断を行うことが望ましい接触者である。なぜなら、B病院の同室者は2週間以上同室で過ごしているため。濃厚接触者であり、最優先接触者となる。
3.× B病院認知症治療病棟に配膳車を運ぶ栄養課職員は、最優先とはならない。なぜなら、B病院認知症治療病棟に配膳車を運ぶ栄養課職員とAさんとの接触はほとんどないかごく短時間であると考えられるため。
4.× Aさんの自宅へ週回生活援助に訪れていた訪問介護員は、最優先とはならない。 なぜなら、週1回の生活援助では濃厚接触者には当たらず、発病ハイリスクの要因はないため。

次の文を読み 51〜53 の問いに答えよ。

肥満の既往の有無と大腸癌との関連を検証するための疫学研究を行うこととした。 A病院において大腸癌と診断された患者100人を登録した。 また、同院で人間ドックを受検し大腸癌が無いことを確認できた100人を選定し登録することとした。 次に、これらの対象者の肥満の既往を確認することとした

51 この研究デザインはどれか。
1.介入研究
2.横断研究
3.症例対照研究
4.生態学的研究
5.コホート研究

3.症例対照研究

1.× 介入研究とは、研究者が意図的に一部の対象者に何らかの働きかけ(介入)を実施して、介入を受けた人たち(介入群)と受けなかった人たち(非介入群)を比較し、その影響を検討する研究である。
2.× 横断研究とは、一時点における曝露と疾病発症との関連について調査する方法である。
3.〇 正しい。症例対照研究とは、大腸癌の診断結果をふまえて、肥満の既往の有無を過去にさかのぼって調査する方法である。
4.× 生態学的研究とは、疾病と曝露の関連について、国や地域といった集団単位で検討する方法である。
5.× コホート研究とは、分析疫学における手法の1つであり、特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団を一定期間追跡し、 研究対象となる疾病の発生率を比較することで、要因と疾病発生の関連を調べる観察研究の一種である。将来に向かって追跡し比較する方法である。

52 大腸癌の発症には性別や年齢の影響が知られている。そのためこれらの要因を調整する必要があると考えた。 登録された大腸癌患者人に対して性別および年齢を対応させた人間ドック受検者人を選定することとした。
この方法はどれか。
1.層化
2.標準化
3.無作為化
4.マッチング
5.多変量解析

4.マッチング

1.× 層化とは、性別や年齢などの交絡因子となり得る因子について、男女別・年齢階層別など母集団をいくつかの集団に分けて解析を行う方法である。
2.× 標準化とは、2つ以上の集団において観察されるイベント(死亡や罹患)の発生頻度を比較する場合に、基準集団を定め、性別や年齢などの主な交絡因子の影響を排除した指標を計算する方法である。
3.× 無作為化とは、介入研究において、研究の対象者を介入群と非介入群のどちらかに確率的に無作為に(ランダムに)割り付ける方法のことをいう。
4.〇 正しい。マッチングとは、ある症例群に対して対照群を選定する際に、交絡因子として考えられる性別や年齢、居住地域などを症例と一致させることをいう。
5.× 多変量解析は、性別や年齢などの交絡因子となり得る因子について、データ収集後、分析の段階で調整する解析手法のひとつである。

53 大腸癌患者 100 人と大腸癌が無いことを確認できた人間ドック受検者 100 人の肥満の既往の調査結果を以下に示す。

肥満の既往ありの肥満の既往なしに対する大腸癌ありのオッズ比を求めよ。
ただし、小数点以下第2位を四捨五入すること。

13

オッズ比は、以下の計算式で求めることができる。
【大腸癌ありで「肥満の既往あり」の「既往なし」に対するオッズ】=25 ÷ 75
【大腸癌なしで「肥満の既任あり」の「既往なし」に対するオッズ】=20 ÷ 80
【大腸癌ありで「肥満の既往あり」の「既往なし」に対するオッズ(25 ÷ 75)】÷【大腸癌なしで、「肥満の既任あり」の「既往なし」に対するオッズ(20 ÷ 80)】
≒ 13


【疫学の概念】

疫学とはまず第1に「人=人間」を対象とする学問であること。
そして、その人とは、1個人ではなく(  )を対象とするものである。
人間の集団

定義の中にある目的に、健康関連の様々な事象の(  )を観察することとある。
頻度と分布

集団に対して頻度と分布を観察するには、何に注目するか。
疫学の3要素
①(  )②(  )③(  )
①時間time
②場所place
③人person

疫学研究の歴史として、(  )のコレラ調査がある。
ジョン・スノー

日本での疫学研究では高木兼寛による(  )の予防が有名。
脚気

脚気は(  )が不足することにより生じる。
ビタミンB1

ナイチンゲールによる業績として(  )や(  )がある。
レーザーチャート(蜘蛛の巣チャート)  鶏のとさかグラフ

結果は必ず原因の後にあるという前方向の研究手法を(  )という。
コホート研究

原因は必ず結果の前にあるという後ろ方向の研究を(  )という。
症例対照研究

イタイイタイ病の原因は(  )である。
カドミウム(Cd)

水俣病の原因は(  )である。
メチル水銀(有機水銀)[CH3Hg]

1類感染症には(  )などがある。
エボラ出血熱

★2類感染症には(  )などがある。
結核

3類感染症には(  )などがある。
コレラ

4類感染症には(  )などがある。
E型肝炎、A型肝炎

5類感染症には(  )などがある。
インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く)
ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く)
梅毒、麻しん、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症


【感染症の疫学】

感染に重要な要因3つ
(  )・(  )・(  )
病原体  感染経路  宿主

感染のプロセス
(  )→(  )→(  )→(  )
汚染→定着→臨界的定着→感染

(  )……すでに感染しているが、発病していない人のこと。
キャリア(保菌者)

院内感染では日和見感染症が多くみられやすい。
日和見感染症には(  )・(  )などがある。
MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)  緑膿菌

(  ):地域的に狭い範囲に限定した感染症の流行。
(  ):通常の発生率以上の発生となった場合。
(  ):世界規模・国際的に広がる状態。
エンデミック
エピデミック/アウトブレイク
パンデミック



もどる