web漫画レビュー――『GOLD-RUSH』


2014/04/30


web漫画レビュー16回目。
今回は“少年ワロス”の漫画の紹介です。


『GOLD-RUSH』
作者は“エリ”先生。


URLはこちら
ttp://books.vipdoor.info/comic/ww4239




※13話終了時の感想となります。




【ジャンル】
王道ファンタジーバトル漫画

【内容】
童話作家とは、
カタリベを選定する能力を持つ者。
イソップ童話『ミダスの手』は、
強欲な王様が触れたものを黄金にする手を手に入れ、
しかしそのせいで大切なものまで黄金にしてしまうという物語ですが、
童話作家はその物語を紙に書いて残すのではなく、
人間にその物語を与え、カタリベとして物語を語らせます。
要するに、童話作家は、
人間に自分の書いた物語に関した能力を与える力を持つ者のことで、
『ミダスの手』の“触れたものを黄金に変える能力”を
与えられたカタリベが主人公です。
能力は必ずしもいいものとは限らず、
言い換えると呪いのようなもので、
バッドエンドとなるような物語のカタリベは、
相応に悲しい人生を歩むことになってしまいます。
そんなカタリベたちが、呪いを消すために、
童話作家に物語を書き直させようとしたりするのが、
『GOLD-RUSH』の物語です。


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さてさて。

とりあえず、最初の1話。
表紙を含めて13ページ分を読んで頂けると分かると思うのですが、
たったこれだけのページ数なのにも関わらず、
凄く惹かれる冒頭となっています。


1話だけで、これほど「続きが気になる!」
と思えるような漫画はそうそうないです。



何故こんなにも引き込まれるのか。


目立った特徴としては、
「ふきだしの多さ」
が挙げられるでしょうか。


ふきだしは多いですが、
文章量は多くなく、
台詞を細切れにしてふきだしに当てはめている
といった形になっています。

それなのに会話がぶつぎれになっているというような
印象はまったく無く、
一つ一つの文章が短いおかげで、
テンポよくスラスラと台詞が頭に入ってきます。

台詞の選び方が本当にうまいです。


漫画を描く上でありがちなのが、
印象的な台詞を描くために台詞を無駄に
“倒置法”のような構成にしてしまう人も多いんじゃないかと思います。

例えばこんな感じです。
「死んじまった!俺のせいで……!」
(※私が適当に考えた台詞)
これは、“俺のせいで死んだ”ことを強調するために、
倒置法を使っている訳で、
文章をつくる上での基本的な技術ですが、
『GOLD-RUSH』では逆に、
“倒置法”があまり使われていません。

ふきだしが多い割には少ないほうなんじゃないかと思います。

もちろんまったく使われてない訳ではありませんが、
スラスラと台詞が頭に入ってくる要因の一つがこれですね。
倒置法など文章を書く手法というものは、
よかれと思って多用してしまいがちになるものですが、
ある意味で文章を難解にしてしまうものだったり、
読みにくかったりしてしまうもので、
無闇やたらと使えばいいという訳ではありません。

漫画は小説と違って、
絵とふきだしで文章を強調させることが出来るので、
回りくどい言い回しにすることは避けて、
主にふきだしの配置によって迫力を出しているのがこの漫画ですね。


また、
台詞がスラスラと頭に入ってくる要因はもう一つあって、
同じことを2回言っている。
ということです。

例えば、1話最後の台詞で、

「おい!そこの奴!
 2枚だ
 銀貨2枚で
 この俺、ミダスが あんたを助ける」


これも2枚ということを2回言ってますね。
他にも「なんだよその眼は」というところだったり、
金貨の価値が下がった部分だったり、
1話だけでも繰り返し同じ説明をしている部分が多々見られます。


こういった点が、
漫画をスラスラ読ませる要因なんじゃないかと、
勝手に思いました。





分かりやすいのは9話でしょうか。
ふきだしが細切れになっていて、
順を追った説明がされてあって、
「親不孝なわけが」
「ダメな姉なわけがないだろう!」
「今日だって 俺のことばかり心配してる!!!」
「こんなに優しい人が!」
「ダメな姉ちゃんなわけないだろ!」

というように言い回しを変えて
姉さんがいい人だということが
繰り返し説明されています。

そして最後に、
心が解放された演出として、
広くコマ割りをとって、
「こんなに立派な 姉がいる!!!」



台詞に勢いがあって、
鳥肌が立ってしまうのも止むを得ないですね。

ぞくぞくします。




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もちろん、
『GOLD-RUSH』の魅力は、
台詞の勢い、読みやすさだけでは無いです。


省エネ気味な作画ながら、
構図に工夫が為されていて、絵でも魅せられます。
そのあたり以前紹介した『平穏世代の韋駄天達』の天原先生の作風と似ているでしょうか。


あらすじでも説明した通り、主人公は、
触れたものを黄金に変えてしまうという能力を持っているのですが、
そんな物語の肝である、
黄金の描写がなかなか上手いです。




例えばこちらは、
布を相手の足に巻きつけた後に、
布を黄金に変えて動きを拘束する
というシーン。


絵はある程度更新スピード重視で手を抜きつつも、
布が黄金になった質感の表現がうまく描かれていて、
画力の高い作者さんだなという印象を持ちました。

白黒で、
形状が同じもので、
唯一、材質だけが違うものを正確に描写する。


簡単にこなせることでは無いです。


王道少年漫画ということで、
バトルシーンも多い漫画ですが、
激しい動きや難しい構図も難なく描けてしまう作者さんなので、
安心して漫画を楽しむことができますね。

あと上の画像でいうと、
黄金拘束!
の部分なんですが、、この技名の配置が私は好きだったりします。

文字が若干斜めに傾けてあったりと、
細かいセンスが漫画の魅力を引き立たせています。


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基本的に萌え成分が排除された序盤ですが、
カーレンが仲間になってから結構可愛いシーンもあったりします。

ぴょんぴょん跳ねてて可愛いです。

拘束されている状態なままなのが個人的に好きです。
小ネタというほどでもないですが、
こういうちょっとした面白いシーンがいくつかあったりして、
説明回でも読んでいて楽しいです。


少年漫画といえば、
合間合間に挟まるギャグシーンですが、
『GOLD-RUSH』にもグラサン兄弟など、
エリ先生独特なギャグ描写が盛り込まれているので、
そういう少年漫画っぽい雰囲気を楽しみたい方にはかなりオススメできると思います。


随所のギャグを見ればわかる通りというか、
それ以上にエリ先生は変な人で、
りんご犬Tシャツとかも売ってるみたいなので、
気に入った方は是非。
ttp://www.ttrinity.jp/shop/appledog/


なんだこの顔














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エリ先生繋がりで、
『なによもう』もオススメです。
URLはこちら
ttp://books.vipdoor.info/comic/ww1166




女子高生の背中におっさんが張り付いて、
どうしよう……という話。



作者別人でしょ!!!!!!11

……と思われるかも知れませんが、
『なによもう』は2006年にうpされた漫画で、
『GOLD-RUSH』は2012年に最初がうpされて、
現在2014年に更新中と、
かなり時間が空いているので、
そりゃあレベルが格段に上がっています。


ですが、こっちはこっちで面白いというのが本音の話。

マウスで描かれた漫画で、
所々読みにくいところもありますが
予想外な方向から飛んでくるシュールなギャグに笑わされます。

主人公の名前は満子ちゃんというのですが、
読みはみつこちゃんだったり、
どうでもいいところで読者を騙してきます。
くやしい。


最終話のタイトルが、
「おかえり」だったので、
おっさんが一度離れて、結局戻ってくるエンドかなと思ったのですが、
これも予想が外れました。

普通にいい話っぽくなってました。
悪く言えば打ち切りみたいな終わり方になってましたけどね(汗



1話完結型のギャグ漫画で、
毎回パターンが違うので飽きずに読むことが出来ます。
ラブコメ阻止するくだりとかバイトの面接のくだりとか好き。

時間に余裕がある方は是非読んでみて欲しいです。