web漫画レビュー――『うんこ漫画』


2013/08/29


今回紹介するのは、
私がもっともVIPらしい
元々の新都社らしい漫画だと思う漫画。

『うんこ漫画』
の紹介です。


※今回いつにもまして文章とか言ってることが滅茶苦茶な気がするので注意。


作者さんは、
“1000までスレ”“>>1さん”です。
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=3987
※うんこ漫画21更新時点での感想となります。



【ジャンル】
ラブコメ?ギャグ?わかんない。
作者曰く、ノージャンル漫画。

【あらすじ】
ある日の学校。
うんこが漏れそうな主人公シント。
男子トイレが満員だったため、
やむをえなく女子トイレを使うことにしたのですが、
そこで主人公はトイレの壁に書かれた落書きを目にします。
そこから、主人公ととある女子との文通が始まります。
しかしそのとある女子の正体はクラスの虐められっ子で……。





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さて、この漫画は作者さんの名前を見てもわかる通り、

VIPの「1000まで行ったら漫画描くwww」
……というような内容のスレが、
本当に1000まで行ってしまったために生み出された漫画です。


そんな適当な漫画でありながら、
褪せない面白さで読者を引きつけてきたのがこの漫画。

自由すぎるスタイルなので、
人を選ぶ作品ではあると思いますが、
その面白さは保障できます。






こういう漫画は、
やる夫シリーズに近いものがある気がします。


『やる夫がバトル・ロワイアルに参加させられるようです』
等は、個別に感想記事を書いてもいいくらい好きな作品でもあります。

ああいうのは言ってしまえば、文字だけで出来ている作品であり、
まとめブログ等で読むと色付けされていたりと
比較的読みやすくなっているかも知れませんが、
本来は、黒一色であり、
背景も無ければ、キャラが何をしているかも分かりにい。

内容も練られているかと聞かれると、そういう訳でもなく、
序盤に限るとは言え、安価で進行を決めています。



……にも関わらず面白い。
それでいて読みやすい。


うんこ漫画も同じです。
あんな適当な漫画であるにも関わらず、面白い。

謎の魅力があります。

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その原因を考えたとき、
そもそもが糞漫画であるという、
そういう適当なジャンルに属する作品という前提の上で読んでいるから、
ハードルが下がって違和感なく読むことが出来る
面もあると思います。

ジャンルとして糞漫画なので、
絵は下手で当然だし、話も滅茶苦茶、要所要所に他作品のパクりがあっても気にならない。

ここまでハードルを下げておけば、
(もちろん読んでもらうためには基本的な話力は必要ですが、)
自分の話力以上に漫画を面白く感じさせることが出来るのではないかと思います。


ただ、そういうジャンルとして漫画を成立させるということ自体がなかなか出来ることでもありませんし、
“ストーリーのある糞漫画”であることも重要です。
ストーリーのない糞漫画なら多く存在しますが、案外ストーリーのある糞漫画というものはありません。

ストーリーのある糞漫画ということで、
有名なところで言えば、“やまもと”先生の漫画を想像されるかも知れませんが、
やまもと漫画は絵が適当なだけで、読んでみると分かる通り、
ちゃんと漫画になっていて、糞漫画かと言うと私は違うと思います。
ちなみに『ひきこもり世界』は個人的に名作だと思ってます。
一度読んでみて下さるとやまもと先生の良さがわかると思うので、是非。
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=13564(※消滅しました)


……という訳で、狙って糞漫画を描くというのは、意外と難しいことなのです。



ただし、ハードルを上げない方法というのは簡単です。
漫画を読む上で、評価の対象になる順番は、
“絵→話”なので、
絵をある程度下手に崩して描けばいいのです。

漫画において、画力が重視!
まず絵で気に入って貰えなければ読んでもらえない!


……という話をよく聞きますが、
新都社に関して言えば、
“コメント機能”として、
他人の評価がわかる機能が付いている
ので、
新都社での読むか読まないかの判断基準としては、
“絵”よりも“コメント欄の雰囲気”または“コメント数”
それから、“作品の勢い”
が重視されているのでは無いかと思います。


「絵が下手で敬遠してたけど、最高に面白い!」
というコメントで埋まっていればこっちのものですし、
新都社で連載するなら、
特に絵には力を入れなくてもいいと思います。

※もちろん、上手い下手以前に、
あくまでも読みやすい絵、工夫をしていること前提です。



紙媒体と違って、デジタル画面の情報は読み取りにくいとも聞きますし、
そもそも、本気で漫画を読もうと思って新都社に来ている方は少ないので、
細かく描き込んでもそれを評価してくれる人は滅多にいないと思っていいと思います。

例えば誰から見ても明らかに高い画力があるなら別ですが、
基本的に中途半端な画力の高さは、ただハードルを上げてしまうだけです。
それに加えて一番の問題は、新都社においては画力の高い作品は投げ率が高く、
あまり良いイメージを持たれていないので、
絵は適当でいいのです。

……まあ、これは極論ではありますが!


簡単にまとめると、
特にこだわりがないのなら、
下手に絵を重視しすぎて更新が遅くなるよりも、
適度に手を抜いて、更新ペースを上げる方が読者さんは得やすい
ですよ、ということですね。


勢いが大切です。



WCRとか見ていると画力が大切だと勘違いしがちですが、
あれは、ある程度の更新ペースを保った上での画力であり、
分かりやすい作品一覧やコメント機能のある新都社とは違うと考えた方がよさげです。

まあ、例えば後々長編となったときに新規読者さんを得やすいのは、
絵が丁寧な漫画で間違いないとも思うので、
自分のスタイルにあった、ペース配分をすることが一番大切ですね。

web漫画は遊ぶ場所なので適当でいいのです。




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話を戻して、
うんこ漫画が適当であるにも関わらず面白い原因として、2つ目。

そのコマで、
描きたいものが何かわかりやすい。


ということです。

例えばうんこ漫画1ですが、

こんな感じで移動していることだけを表すコマ(ページ)が
3箇所もあります。


それでいて、gdgdには感じないのは、
無駄なコマや台詞が無く、
それでいて本筋に関わることだけはきちんと細かく描写するという、
ストーリーの方向性が固まっているおかげだと思います。


だから1コマ1コマで台詞が長くならない。
上の方で紹介した“やる夫”シリーズも同じですね。

キャラクターが長文を喋らない。

台詞をまとめる技術の大切さが分かります。


台詞が必要とされないストーリーの組み立て方をしている
というのもポイントなのでは無いかと思います。

わかりやすいストーリーだからこそ、
台詞は必要がなく、
わかりやすいストーリーだからこそ、
王道で熱い。面白い。



読者を超展開、見事な伏線で驚かせてやろう!
というのもいいですが、
分かりやすい王道な展開の中でも、
あっと驚く展開は作ることが出来ます。
様々な人物や理屈を絡ませて複雑なストーリーを作るよりも、
まずは、分かりやすいストーリー、
ネタバレされた状態で読んでも面白く感じれるストーリー
考えることが大切なのではないかと改めて考えさせれれました。


面白い漫画は何週読んでも面白い、というのも、
こういうことなのでは無いでしょうか。



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最後に、『うんこ漫画』の一番の魅力ですが、


実は超王道な少年漫画要素!です。

下げてから上げる技術や、
回想を入れるタイミングが本当に上手い。


狙ってやっているのか、偶然なのかわからない。
王道でありつつも、糞漫画であるが故にその展開の予想出来なさ。

読んでいる際に作者の存在を感じない。
漫画の世界に入り込める世界観。


作者の奇才を感じます。





結局、未完のまま何年も放置されている作品ではあるのですが、
新都社作家ならば、一度は読んでおいて損はない漫画だと思います。


適当なのに、面白い。

漫画を描く上で見習える点は、まだまだ多くありそうです。